20101011

村上春樹と東京ガス





村上春樹のインタビュー集『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』を読む。

これまで村上春樹のインタビューつまり小説以外の文章を読んだことが、ほとんどなかった。
エルサレム賞スピーチぐらいだろうか。


500ページ近くあっていくらインタビュー本とはいえ、なかなか読み終わらないわけですが、これまで読んだなかで、「ああ、これはいい話だ」と思ったところを一部抜粋。

「『海辺のカフカ』について簡単に教えてくださいますか。」という質問に対して。

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これは十五歳の少年の話なんですが、僕にとっては賭けでした。これまでの登場人物はたいてい二十代か三十代ですから。僕は考えました、今度はどうしよう。五十代か、それとも少年か。それで後者の可能性を選んだんです。少年について書くことは素晴らしいことでした。僕自身が十五歳だった日々に戻ることができたんです。その頃の記憶は鮮明で新鮮だったので、本の空間においても、少年の眼で世界を見ることができました。作家であることの素晴らしさですよ。本気で願うなら、誰にでもなることができるんです。そして、もし十五歳のときに感じていたことを、僕自身が本当に経験できたなら、読者もまた同じ経験をし、この感情を共有することができる。それは、物語からの最高の贈り物です。僕が生きるのをそれは助けてくれます。僕らの存在はときにあまりにも孤立していますが、物語があれば、もう一人ではありません。僕らは、心と心で、精神と精神で伝えあうことができるんです。それはいつでもやって来るというようなものではありませんが、しかし、そういったことが生まれるのはたしかです。何にも替えがたい力ですよ。
p.165
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もう、10年前になるのか、15歳。

と、ここまで書いてもはや村上春樹のことはどうでも良くなり、
ふとこのCMを思い出す。

何度観ても、最後のところで涙が。


東京ガス CM 家族の絆・お弁当メール篇



村上春樹と東京ガス、か。