20110917

しあわせな価格設定


職業柄、ふだんから消費者と生産者を行ったり来たりしているわけだけれど、今日改めてまとめてみたのは、「価格設定」の話。
考えるきっかけになったのは、かの有名なドラッカーの以下の文。


価格設定の唯一健全な方法は
顧客の望む価格に合わせて製品を設計することである。
 欧米のほとんどの企業が、コストを積み上げ、それに利益幅を上乗せして価格を設定する。そして、製品を市場に投入するや価格の引き下げを余儀なくされ、膨大な費用をかけて製品の設計を改める。価格設定を誤ったばかりに、優れた製品を捨てざるをえなくなったケースもある。なぜそういうことになるのか。コストを回収し、利益を出さなければならなかった、が彼らの答えである。

 価格設定の唯一健全な方法は、市場が支払ってくれる価格からスタートし、その価格に合わせて製品を設計することである。価格を出発点としてコストを削り込んでいくことは、当初かなりの苦労を要する。だが、スタートを誤り、何年も損失を続けるよりはいい。  価格主導のコスト設定は、一〇〇の歴史をもつアメリカ産の考えである。二〇世紀のはじめ、GEはこの考えによって世界の発電機市場を制覇した。発電所が支払ってくれる価格でタービンとトランスを設計した。


(『未来への決断』、eラーニング教材『ビジネスにおける五つの過ち』)

そう、コストから価格を設定するのではなく、最終的に消費者が払ってくれる価格をもとに商品を設計する。
これがドラッカーが健全な価格設定と言うものである。

さて、このドラッカーの見解についての是非を問う前に、価格設定には他にどんな方法があるのかまとめてみる。

(1)コスト基準型プライシング

・コスト・プラス法:単位費用に一定水準の利益を加算し、製販価格を設定するものです。
・目標利益法(損益分岐点法):達成したい目標販売数量を決め、その時の総費用(変動費+固定費)を算定します。つぎに、総費用に目標とする利益率を掛け、総費用に加算します。これを目標販売数量で除して、単位当りの価格を算出。
【ポイント】利益やコストを自社中心に計算している。自社都合の優先。

(2)競争基準型プライシング

・市場価格追随法:現在の市場価格を重視し、その価格帯の中で大幅に上下しない価格を設定します。自社の商品が差別化されている場合は、この幅の中で高めの価格設定も可能。
・プライス・リーダー追随法:業界を先導して価格を上下するシェアの高いリーダー企業がある場合に、このリーダー企業の価格に従い価格設定する方法。
・慣習価格法:業界による伝統的価格帯がある場合に、それに従って価格設定する方法。業界の慣習価格が支配的で、消費者にも定着している場合、低価格設定しても販売数量が伸びない傾向があるため、むしろ高価格化に向け、品質向上などを通じ商品のイメージを高めるようにするなど、中長期の取り組みを検討。
【ポイント】外部基準の優先

(3)マーケティング戦略基準型プライシング

戦略的に最適価格を確定し、そこから適正マージンを確保すべくコストダウンを図るという発想で行う価格設定。
・価格差別化:お客様の支払意思額に従った価格設定を原則にします。この支払意思額はお客様によって異なるため、同一商品・サービスでも複数の価格設定を行うことが可能。航空各社の予約を入れる時期による多様な航空運賃体系やパソコンソフトの学生や教員へのアカデミックパック提供などがその例。顧客を、商品・サービスへの反応によって、消費者個人を選別する価格差別化の手法。
・プレミアム・プライシング:同じカテゴリーの商品で、2種類以上の複数価格帯を準備し、価格のプレステージ機能を維持する方法。価格敏感な層には低価格で、価格に敏感でない層や品質を重視する層には高価格での販売を狙う。高品質のものがプレミアムを獲得するためには当然ながら品質の保証が必要。特に、バッグや服飾、アクセサリーなどのいわゆるブランド商品では、消費者側が「価格が高いから良い商品なんだ」と強く思い込んでしまう心理をうまく利用した価格設定の例で、名声価格法(または威光価格法)とも呼ばれる。

※下記リンク先を参照
http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/faq/ans04-01.html

例えばバッグで考えてみれば、競争基準型プライシングは、相当大きな規模にならないとできないと思う。むしろ小さな規模のブランドが競争基準型プライシングに則って開発などを進めたら疲弊するだけかも。ただ、バッグも型によっては慣習価格法なら効果があると思う。

で。

僕としては、コストプライス法とプレミアム・プライシングをうまいこと掛け合わせられないかな、と。「威光価格法」と言われると、すげーーーーーイラッとするけど、それで商売が成り立っているのであれば、それはそれでそのブランドに価値を感じているお客さんがいるということなのだから、いいんだろう(嘘ついていたら最低だけどね)。

こうゆう価格設定の問題と、広告クリエイティブは絡んでいくべきだと思っていて、その両方が合わさった時にヒットが出るんだと思う。