まず名前がかっこいい。ポロック。
最近作品集をこつこつ集めているフォトグラファーNick Knight(ニック・ナイト)といい、名前がかっこいい作家に惹かれてしまうのは、ロゴ好きアイコン好きな日本人の民族性故なのか。それともそれとも、日本の名字ランキング9位にランクインしている小林という平凡な名字故なのか。たぶん両方。
たしか、小学生のときに「せめて下の名前くらいは特徴のあるものにしたい」と思って、名前を変える手続きを調べた記憶がある。今思えば親に申し訳ないし、下の名前で呼んでくれる人も多いので気に入ってる。
ポロックは、1940年代後半からニューヨークを拠点に活躍した抽象表現主義の画家。んー、40年代後半“から”と言ってしまうと、本展覧会の構成上大きなポイントにもなっている、あまりにも短すぎるポロックの黄金期をうまく表現できなくなってしまう。
展覧会の構成に従えば、4つの時期に分けられるようで。
初期;1930-1941年(アルバート・ピンカム・ライダー、あるいはネイティヴ・アメリカンの芸術やメキシコ壁画、そしてピカソのキュビスムの影響を受ける)
形成期;1942-1946年(ピカソ以外に、ミロやシュルレアリスム、マティスなど、ヨーロッパのモダンアートを積極的に吸収し始める)
成熟期;1947-1950年(画面を同じようなパターンで埋め尽くす「オールオーヴァー」な構成と、床に広げたキャンバスの上に流動性の塗料を流し込む「ポーリング」の技法を融合させて、自己の代表的な様式を確立)
後期・晩期;1951-1956年(成熟期の網の目のような抽象的構成は捨てられ、初期や形成期に描いていたような具象的なイメージが、画面に再び現れる。 1954年からは作品数が顕著に落ち込む)
時系列に作品をみたけれど、雰囲気としては、
初期→なんか悶々とする
形成期→なんか自信がある雰囲気
成熟期→スタイルを確立した感
後期・晩期→成功に縛られるのが嫌だけど、どうしたら次の表現に迎えるのか葛藤
といった印象だった。
成熟期から後期・晩期に変わるところがつらい。
たしか形成期の部屋にあったパネルに、ポロックは新しい表現を模索していて、ピカソの画集を見るたびに「クソ!さきにやられてる!」と言って画集を床に投げつけていたというエピソードが出ていた。きっとポロックは、自分と他人の比較だけではなくて、つねに今の自分が過去の自分を越えていなければならないような使命感を背負っていたのだと思う。
成熟期から晩期にかけて、評価を得ていたオールーオーヴァーとポーリングのスタイルを捨てようとして新しい表現を模索。しかし、過去の自分を越えられなかった。晩期の作品に暗い色彩が多かったこともあって、ポロックの想いを想像すると、晩期の展示室を歩いているだけで、胸が苦しかった。
結局ポロックは、飲酒運転で事故を起こし、この世を去る。享年44歳。
ピカソとアンディ・ウォーホルをつなぐ偉大な芸術家と評されるようになる。美術史的な評価はともかく、初期から晩期までの作品群を“続けて”観た時間は、振り返るほどに濃くなる不思議な時間だった。
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